【アモリ通信332:君、社長を辞めたらどうや】 20210922

 

◎◎さん(^^♪


こんにちは。


SILアカデミー 1on1 オンライン顧問 福島塾
塾長の福島清隆です。 【専門は物流です】

本日のテーマは
    「君、社長を辞めたらどうや」です。

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 盛和塾35  平成12年7月号  通巻35号

経営の研究
 松下幸之助に学んだ”松下流経営哲学の神髄

  ーーー「経営の究極は、人間学にあり」

  松下電器産業株式会社終身客員
  木野 親之
           P36~~P50

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 「君、社長を辞めたらどうや」 P42~P44

 「弁償するまで、君を辞めさすわけにはいかん」

             P44~P47 (要約)

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「君、社長を辞めたらどうや」 P42~P44

 私の仕事が順調にいっていたあるとき、本社から
呼び出しがありました。会社の成績はいいし、わざ
わざ本社からお呼びがかかるというのはきっといい
話に違いないと思って、私は勇躍本社へ飛んで行き
ました。松下電器の本社には「松の廊下」というの
がありますが、私はそこを肩で風を切るようにして
歩き、社長室へと向かいました。

 部屋に入るといきなり、松下幸之助の机の前にひ
とつだけ置いてある椅子に向けてあごをしゃくるよ
うにして「ここへ座れ」と言われました。普通は
「どうぞ、どうぞ」と、入口近くに置いてある応接
セットに案内してくれるのですが、なぜかそのとき
は違いました。

 実は、その椅子に座る人は怒られると決まってい
たので、どうして私がここへ座らなければいかんの
かと思いましたが、仕方がないので腑に落ちない思
いのまま腰をおろしました。もしかしたら、すごく
重要な話が出てくるかもしれない、といいように解
釈して座ったのです。

 松下幸之助は、私の気持ちを知ってか知らずか、
ごく普通に話しかけてきました。
 「君な、疲れてるやろ」
 「はい、少しばかり疲れています」
 「病院に入ったらどうや。君、一度社長を辞めた
  らどうや」

 あまりにも突然のことで、私はびっくりしてしま
いました。東方電機の社長を辞めて松下本体の社長
になれというのなら分かりますが、いきなり社長を
辞めろですから私は冗談だと思って、初めはニヤニ
ヤ笑っていました。すると、松下幸之助の顔が段々
険しくなってくるので、これは本物だと思い直しま
した。

 私も若かったものですから、今ここで僕をくびに
したら困るのは松下幸之助や、困るのは松下本社や
、と思っていました。当時、松下電器グループのな
かで東京に本社を置き、東京でものを作っているメ
ーカーは東方電機だけです。しかもファクシミリと
いうマスコミ関係にはとくに縁の深い仕事をしてい
ましたから、マスコミ各社は会社を注視しています
。当時の私は「時の人」としてNHKに引っぱり出さ
れたり新聞に掲載されたり、すっかり調子に乗って
いました。そんな私をくびにしたら、なぜ木野をく
びにしたのかと笑われるのは松下幸之助であり、松
下本社であり、私以外の誰がやっても会社の建て直
しはうまくやれない、と自負していました。

 今思えば、それは驕り以外の何物でもなかったの
ですが、私は「わかりました、辞めます」と言いま
した。
しかしそれは素直な気持ちで言ったのではなく、く
びを切れるものなら切ってみろという開き直った感
じで言ったのです。心のなかでの松下幸之助への初
めての反抗でした。もちろん、そういった気持ちの
動きは当然顔に出ているはずです。
 「そうか!君、辞めるか」
 「はい、辞めます」
 「でも、君ひとりが辞めたらあかんぞ。君のとこ
の重役も全部やめさせろ」
 「ちょっと待ってくださいよ。うちの重役は一生
懸命やってくれています。褒めてもらうことはあっ
ても、辞めさせるのはとても・・・」
 「君、重役だけではいかん。全従業員をやめさせ
ろ」

 全従業員を辞めさせろと言われた瞬間、私は何か
分かったような気がしました。これは違うぞ、僕の
くびを切るということでもなければ、重役のくびを
切るということでもないということまでは分かった
のですが、真意が分かりません。「全従業員を辞め
させろ」という意味が分からなかったのです。

 「君はよくやってくれたし、君たちもよくやって
くれた。第一東方という山を、君たちは見事に踏破
した。だけど、第一東方の後ろには、第二、第三の
東方山というのが存在する。しかしその山々は、
残念ながら今の君たちの力では踏破できない。会社
というものは社長の器で決まるから、社長を替えな
ければいかん。社長だけではあかんから、重役も替
えないかん。いや、重役だけではあかんので全従業
員が全部入れ替わって、会社全体が異質化しなけれ
ばいけないんだ。そやから第二東方に登る部隊は、
まったく別の部隊でなければいかん。

 段々とわかるような気がしてきました。なるほど
なるほどという気にはなっていますけれども、まだ
はっきりとは理解できません。

 「君たちはものすごくよくやってくれた。本当に
感謝している。その君たちに対して、辞めろ、辞め
たらどうやと言ったけれども、本当は辞めてもろた
ら困る。いちばん困るのは松下電器や。松下本社も
困るし、僕も困る。だけども、今の君たちでは第二
東方に登ることはできないんだ。君だったらどうす
る?」

 自分で言っておきながら、「どうする?」と私に
答えを求められても、私には答えようがありません
から黙ってじっと松下幸之助の目をみつめていまし
た。まさに真剣勝負の感じで、額には汗がたらたら
と流れてきます。

 すると、松下はにこっとして「君な、そう難しく
考えるな」とさらっと言いました。

 「君、そう難しく考えるな。君が変わったらええ
んや。重役も全部変わり、社員も全部変わったらえ
え。思い切って人間革命をし、中身を全部入れ替え
たらええんや。そうしたら君たちは第二東方山に向
かう社長の器になり、重役の器になり、社員の適性
も第二東方山に挑戦できる条件が整う。そういうふ
うに、君たち全員が異質化すればいいんじゃないか

 そこまで解説してもらってようやく真意を理解で
き、私も初めてにっこりして、「分かりました」
というような顔をしました。

 「君、分かったか?」
 「はい!」
 「そうか。ほな、しっかり頑張ってや」
 それで終わりです。その一言を言うのが、私をわ
ざわざ本社に呼び出した理由だったのです。

 最初は褒美をくれるのかなと思っていたのに、
「辞めろ」という話になり、気持ちを切り換えろと
言われました。自分の気持ちは何も変化していない
し、異質化もしていないのに帰りはものすごくいい
気持ちでした。松下幸之助に教えられて、飛行機の
中で私は自分自身が何か別の人間に生まれ変わった
ような気がしました。小さな身体が大きくなり、背
が伸びたような感じになり、意欲がわーっと出てく
るような不思議な心地でした。

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 「弁償するまで、君を辞めさすわけにはいかん」

             P44~P47 (要約)

(私見:これもいい話なのですが、長くなるので
ポイントのみで要約してみます)

・これは本当に辞めようと思ったときの話です。
・本社の参与になり役員待遇なので、調子が良かっ
 たのだが、ある問題でひどく叱られた。
・アメリカでファクシミリの販売会社をつくった。
・アメリカには松下の家電販売の立派な会社があっ
 たが、ファクシミリ販売だけの別な会社を作った
・日本での成功と同じようにリース会社と契約して
 販売網を作ろうとした。
・いざリース会社と契約となったとき、どこも相手
 にしてくれなかった。
・アメリカでは軍艦や飛行機ならともかく、100万
 円や200万円のファクシミリなど扱ってくれない。
・しかたなくリースからレンタルに切り替えた
・レンタルでは入ってくるお金が少額ですぐに資金
 難に陥った。
・売れば売るほど、債務超過になりこれが本社の耳
 に入った
・本社の経理担当副社長が
 「えらいことです。木野君のところがアメリカで
  債務超過になっています」
 と言い出すものだから、松下幸之助も仕方なく私
 を呼びつけた。
・本社では、松下幸之助の横にその副社長が手ぐす
 ね引いて控えていた。
・私の説明がようやくうまく運び出すと、横から
 副社長が反対意見を言い出して話がまた振り出し
 に戻ってしまった。
・これ以上続けていては帰りの飛行機に間に合わな
 いというところまで絞られて、「もう辞めよう!
 」と思ってその席をたった。
・帰りの飛行機の中では辞めることばかり考えてい
 た。アメリカでは各社ともレンタル方式で販売を
 しているのだから、なぜ本社が金を出して債務超
 過にならないようにしてやる、もしくは邦銀から
 金を借りられるようにしてやる。と、副社長は言
 えないのか。あんな話の分からん経営担当副社長
 のいるような会社ではやっていけない。
・しかも私が松下に大損害を与えて、松下の経営理
 念に反しているかのような言い方をする。考えれ
 ば考えるほど頭に来て、もう辞めよう! と腹を
 くくった。
・東京に帰ってからも腹の虫が収まらず、銀座を飲
 み歩き帰宅したのは午前2時だった。
・そしたら、女房が起きていて
 「えらいことですわ。相談役さんから何回も電話
 がかかってきました。すぐに電話をくれと言われ
 ています」    (中略)
 「いや、枕元の直通電話を聞いています」
・渋々電話をかけると、一回目のコールでつながっ
 た。
 「木野君か、ご苦労さんやった。疲れたやろ。
  そりゃそうと君な、明日時間あるか」
 「時間ならあります」
 「君、上野の美術館知ってるか」
 「はい、知っています」
 「そこへ行ってくれへんか。僕の肖像画を橋本明
  治先生に描いてもらったんや。その展示会があ
  るのや。君、すまんけどな、僕の名代で行って
  くれへんか」
 「はい、わかりました。行かせていただきます。
  それはそうと、度々お電話をいただきましたけ
  れども、どういうことでしょうか?」
 「それだけや、君、もう遅いから寝ようか」
 「留守で申し訳ございませんでした」
・そう言って電話を切ったが、その言葉を聞いて
 うわーっと涙があふれ、受話器はぐしゃぐしゃ
 になった。

   (中略:美術館に行ったがセレモニーは
       3日前に終わっていた)

・あくる日の朝、再び本社に飛んだ。
・「行ってきました」
 「すまんかったな」
  そしてまた、例のあの椅子に座らされた。
・「君な、松下に君はものすごく大きな損害を与え
  た」   (中略)
 「君は会社にものすごく大きな損害を与えた。
  それを全部弁償してもらうまで、君を辞めさす
  わかにはいかんのや」
 「はい・・・・・」
・つまり、辞めるなということです。私は辞めよう
 と思っていたのに、弁償するために身柄を拘束さ
 れてしまい、辞表を出すことが出来なくなってし
 まった。
・東京に帰ると、山下社長から電話があり「木野さ
 ん、ご苦労やったな。しかるべく頼みますわ」
・それでその件は一件落着です。その場に副社長を
 呼んでいたらまた話がややこしくなっていたでし
 ょうが、松下幸之助と言う人はそういう人なので
 す。

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どちらもすごい話だなと私は思いました。

後半の話は、その後、どうやって会社を立て直した
のでしょう? 本社が金を出したのか、邦銀を紹介
してくれたのか。 私はそっちが気になるのですが
いずれにせよ大企業は違います。

違いついでに、またまた書かなくてもいいツマラン
(私の)感想を。


松下幸之助はもちろん、木野氏も相当な名経営者だ
と思います。

自分=木野氏。
自分の上司だった諸々の人々=松下幸之助

こんな図式はあり得ません。私に限らず。99.9%
以上の人が、こんな体験やこんな上司に巡り合って
はいないのではないか。


何でも素直に学ぶのはいいが、レベルの違う人、
違う話から学び過ぎるのも、程々にしておくべき
ではないか?


話には感動し、いい学びになりましたが、それを
自分の環境に当てはめるのは慎重であるべきでし
ょう。

「中村天風」のときにも書きましたが、あまりに
もレベルの違う人ばかりから学びすぎて、人を見
る目が厳しくなるような、勘違い人間になっても
いかんなと・・・・・・

せっかくいい話だったのに、小人の戯言で
      スイマセン (💦💦💦)


ただ、やはりついでに言うと、この原稿をオリン
ピックで金メダルが続出している時期に読み直し
ました。


多くの少年少女は、金メダリストやその他超一流
の人々に憧れて、その人、その道を目指します。
それはそれで大いに結構なことです。
が、99.9%以上の人の現実は、そのレベルまでは
いかず、どこかで「挫折」します。

しかし、それが人生というものでしょう。

それでも、卓球の水谷・伊藤ペアがドイツ戦で
絶体絶命から信じられない逆転劇を演じて、最終
的には中国も破り金メダルを獲得した現実を、自
分にも起こりうる「夢」として思い描くことは何
ら罪な話ではありません。


雲の上の偉人の話や大きな成功を収めた人々の話
も、「純粋に学ぶ心」そして何にしても「比べて
はいけない」。そういう気持ち、考え方が大切だ
なと。


◎◎さんは、これまでの人生の中で、
今回の話と共通するような体験がおありでしょう
か。具体的には必要ありませんが、「ある」
「ない」だけご教示頂ければ嬉しいです。

ちなみに、私の場合、イマノトコロ(苦笑)
     「ない」です (💦)


ご意見をお聞かせいただければ嬉しいです。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


◎◎さんの幸運な日々を祈念します。

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